ただし、この法律の第1条では「この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする」と規定しています。
散骨が「墓地、埋葬等に関する法律」に抵触しないからといって、この“国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地”という点は見逃してはいかないと考えられます。「散骨に関するガイドライン」においても、このガイドラインの目的として、「散骨が関係者の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生の見地から適切に行われることを目的とする」としています。
散骨を行う場合の節度には、この文言が関わってくるのではないでしょうか。

散骨を行う人の多くは、個人の意志を大切にしたり、個人に対する思慕などの思いをもって海や山などへ撒くのだと考えられます。
決して故人様をおろそかにしているわけではないでしょう。特に海洋散骨は、海に対する憧れやロマンもあり、故人を送ったあとは墓参りの代わりに海へ行って故人様を思うという新しい故人様をしのぶ形ともいえます。

海洋散骨の方法には特に決まりがあるわけではなく、現在は行う側が自主的にその方法を決めています。
ただ、散骨の方法によっては、散骨された周辺などを中心に不快に感じる人がいないとも限りません。
散骨はあくまでも、葬送のための祭祀であり、単に船で沖へ出て散骨すればよいというわけだはないのです。
ここが「節度をもって行う」という事になるのだと考えられます。
死者の尊厳を守り、遺族の思いをおもんばかり、また近隣の漁業者や住民に迷惑をかけたり不快な思いをさせないように配慮しながら、適切な海洋散骨を行っていきたいと思います。